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Guest:株式会社HiRAKU代表取締役/元ラグビー日本代表キャプテン廣瀬俊朗氏
スポーツとテクノロジーで
ウェルビーイングな社会の作り方【前編】
スポーツを楽しむ環境をアップデートしていくことで、よりよい社会づくりに取り組むCHEERPHONE(チアホン)のメンバーが、スポーツ業界を中心にさまざまなイノベーターやリーダーの方々とのインタビューや共創型セッションを通じて新しいアイデアや未来について語り合う「CHEERTALK」の第一回を実施。
記念すべき第一弾は、株式会社HiRAKU代表取締役で、元ラグビー日本 代表キャプテンの廣瀬俊朗さんに、スポーツとテクノロジーでのウェルビーイングな社会の作り方をテーマにお話を伺った。
左から パナソニックホールディングス株式会社 木村文香、株式会社HiRAKU 廣瀬俊朗氏、パナソニックホールディングス株式会社 持田登尚雄
「HiRAKU」は新しいチャレンジをするための箱
木村:廣瀬さん、よろしくお願いします。
本日はスポーツxテクノロジーでウェルビーイングな社会のつくり方というテーマとして
お話が出来ればと思います。
まずは株式会社HiRAKU(以下、HiRAKU)さんの取り組みなどを伺っても良いでしょうか?
廣瀬:はい、僕はずっとスポーツをやってきたので、引退した後もスポーツをやっていた人が
輝くためにできることや、スポーツの価値をもっと世の中に伝えていきたいという想いがあって、
いろいろなものを切り拓いていくっていう意味も込めて
会社の名前にHiRAKU(ヒラク)という名前をつけました。
最近は、教育的なことですとか、食にも取り組んでいます。
スポーツの周辺を盛り上げたいなという気持ちもあるので、
スタジアムでキッチンカーを出したりしていますし、
あらゆる人がスポーツシーンを楽しめるような環境を作っていきたいなと思っています。
木村:私たちもまだ廣瀬さんのキッチンカーにお邪魔できてないので、是非今度食べてみたいですよね。
廣瀬:ちょうど今週も宮崎市に行って無農薬のお米の稲刈りをしてくるところなんですよ。
それをキッチンカーで提供する企画も検討しています。
田植えの時も「気持ち悪い~」とか言いながらみんなでヌルヌルの田んぼに入っていったり、
カエルやオタマジャクシ見つけたりすることが面白かったですし、
参加してくれた子供たちにもいい経験でしたね。
木村:幼少期に実際に触れて感じる体験は探求心や周りのお友達とのコミュニケーション力などが
育っていく素敵な経験ですよね。
スポーツ以外の取組みにも積極的に活動され、
まさに切り開いていくというHiRAKUさんらしい取り組みだと思いました。
ちょっと話は変わりますが、廣瀬さんとCHEERPHONEとの最初の接点について触れても良いですか?
持田:コロナ渦のスポーツが無観客で行われるようになったときに、損なわれた熱狂感を何とかしようと
CHEERPHONEの仕組みを使って、リアルタイムにリモートの応援の声を届けるプロジェクトを
車いすラグビー やブラインドサッカーで実施させていただきました。
そのときに、廣瀬さんがTwitterで面白いねと反応していただいたんですよね。
そこから、私が直接コンタクトさせていただいたのがきっかけでした。
廣瀬:そうそう、最初はSNSで出会ったんですよね。
木村:一方的に追いかけたんですね。笑
廣瀬:笑
持田:まあ、そうなりますね。笑
廣瀬さんには、今のCHEERPHONEのサービス形態になる前からお話やご相談をさせていただいていたので、
こうやってご一緒できるのが感慨深いです。
廣瀬:いや、こちらこそありがとうございます。
木村:先ほどのHiRAKUの活動もCHEERPHONEとの出会いも含めて、
まさに未来に向かって突き進む行動力がとても素敵だなと思いました。
HiRAKUという会社をご自身で作られた理由ってあったのでしょうか?
廣瀬:僕が何か新しいもの作っていくとか、誰かと一緒に作るとかすごく好きなんですよね。
今あるものを売っていくというよりも、今までないものを形にして、いろいろな人に喜んでもらいたいって
考えたときに、どこかの会社にお世話になるより、
自分で一つ箱を作ってチャレンジしたいなって思ったんですよ。
木村:自分の想いを形にしたいってことですよね。すごく共感します!
具体的にはどのような新しいチャレンジをされているのでしょうか?
廣瀬:まだ大きな事業になってはいないんですけど、教育的なことでは少しずつ取り組んでいます。
先日も 佐賀の東明館高校の学生と「Enjoy Making Rule」という
ラグビーのルールを自分たちで作っていくワークショップをやったんですよ。
日本にいるとどうしてもルールの中で改善していこうとか、枠の中で考えがちですけど、
ルールは人が作ったものだから、必ずしも正しいものでもなかったりしますよね。
また、時代にあわないものもある。
そもそもこのルールってなんで必要なんだっけとか枠を取り払って考えることが大切だと思っています。
このワークショップでは、それを座って学ぶのではなく、体を動かしながら考えていきます。
足の遅い子や女の子が活躍するにはどうしたら良いかなど考えながらやるのはとても面白かったですよ。
人と人がつながっていくテクノロジーは面白い
木村:ほかにも何か実施されている取り組みはありますか?
廣瀬:視覚情報を奪った上でコミュニケーションをとるワークショップもやっていたりします。
目が見えなくなることでお互いの人間関係がフラットになったり、
伝えていると思ったことが実は伝わってなかったり、いろいろと気づかされるんですよね。
ブラインドラグビーとかデフラグビーの選手のことをちょっと考えたりとか、
街で車いすの人ってどうやって生活しているのかなということを考えるきっかけにもなりますよね。
木村:教育においてもこどもたちの考える力が育まれていたり、
ワークショップでも人を思いやる気持ちが醸成されたり、どちらもとても良い取り組みですね。
廣瀬:ありがとうございます。こういうワークショップって、スポーツに通じるライブ感もあって、
めちゃくちゃ面白いんですよね。
こういうのを僕だけではなくて、いろいろなアスリートの方が、
それぞれのストーリーを交えながらファシリテーションをして行けたら良いなと思っています。
木村:廣瀬さんご自身が新しいチャレンジをされている中で、世の中で注目している事例や、
気になってるスポーツテックなどはありますか?
廣瀬:スポーツでも遠隔教育みたいな形でオンラインコーチングは面白いかなと思っています。
例えば、アフリカにはポテンシャルがめちゃくちゃ高い人たちがたくさんいて、
そういう地域に例えば僕たちや日本から協調性やチームワークみたいなことも含めて
コーチングが出来たらとんでもないアスリートが生まれてくるかもしれないですよね。
木村:なるほど、今の時代だからこそ実現できそうな取り組みができそうでワクワクしますね!
廣瀬:あとは僕が最近お世話になっているランニングアプリも面白いですよ。
一人で走ってても、ちょっと寂しいような感じになっちゃうんですけど、
アプリから「Nice Run!」って届いたり、自分の記録やカロリーもデータとして残されたり、
誰かと共有できる。
特にコロナ禍でみんなが集まれなくなった中で、何か人と人がつながっていくテクノロジーは良いですよね。
木村:人と人とのつながりや、シェアみたいなところがポイントだったりしますか?
廣瀬:そうですね、リアルで人と会うのはもちろん好きなんですけど、
デジタルだと拡散力もあるし、ものすごく手軽に何かを共有できたり、簡単に人とつながれたりしますよね。
持田:そういう意味では、コロナ禍でなかったら私と廣瀬さんは出会えてなかったですよね。笑
廣瀬:確かに!本当にそれはそう。笑、
これまではお互い知らなかったら、コミュニケーションを取ったり、
会うまでにもハードル高かったり時間が掛かっていたりしたと思うんですけど、
簡単に、「じゃあ、オンラインで」ってカジュアルになったのは気軽で良いですよね。
木村:リモートでも世界中の人とつながれるようになったのは良い変化ですよね。
ウェルビーイングに生きるには?
木村:少し話は変わりますが、こういった人と人とのつながりは人の幸せ(=ウェルビーイング)の
一つだとだと思うんですけど、廣瀬さんが「あぁ、これは僕のウェルビーイングだな」って思うのは
どういう瞬間でしょうか?
廣瀬:ランニングやサーフィンとか体を動かしたり、子供と遊んでいる時とか
何かに夢中になって、それ以外のことをあんまり考えてないときは自分が自然体でいいかなって思いますね。
あとは、おいしいものを食べているときかな。(笑)
仲間と過ごす時間もウェルビーイングだなって思います。
木村:私もおいしいもの食べてるときは幸せです。笑
では、ウェルビーイングに生きるための秘訣があれば教えてください。
廣瀬:自分がやりたいことや好きなことを見つけるってことですかね。
自分の中で何が好きなのか、どうなりたいとかどうありたいのかが見えてくると、
生き方が変わってくるんじゃないですかね。
例えば、ただ会社にいると主語が会社になってしまったり、
何も目的がないと世の中の流れに流されてしまったりすると思うんですよね。
そうやって、自分の心に対して素直じゃないことを選択していくとだんだんと
自分らしさっていうものを見失っていき、幸せではなくなってしまう。
そういう意味で、好きなことを見つけて、自分に正直に生きられるのかということは
ウェルビーイングに生きる上で大事だと思います。
廣瀬:あとは自然体でいるとか自然に触れることも大事だと思っています。
テーマのテクノロジーとは真逆になりますけど、デジタルと距離を置く時間も必要ですよね。
つい、朝起きたら携帯を見ちゃうんですけどね。笑
木村:デジタルデトックスも大事ですよね。廣瀬さんらしい回答ありがとうございます。
前編最後にお伺いします。
これからチャレンジしたいことや、やってみたいことは何かありますか?
廣瀬:フィジー、トンガやサモアとかの国々はこれまで日本のラグビー界に
たくさん貢献をしてくれているんですけど、そういう国々や彼らに何か恩返しをしたいんですよね。
留学生として日本に来てくれたりもするんですけど、選手を引退した後の
セカンドキャリア設計に悩んでいたりもするので、
引退した後も何かを切り開いていけるための手助けやサポートができたらと思っています。
そういう仕組みができればもっと多くの方が来てもらえるようになりますしね。
さらに、その仕組み自体をビジネスとして作り上げ、
その収益を日本やそれらの国々のラグビー界の発展に還元できたらとも思っています。
僕が大きな影響を与えられないとしても、そのためのきっかけが作れたら嬉しいですね。
廣瀬:もう一つは、あらゆる人にスタジアムを楽しんでもらいたいですね。
試合会場でビーガンの味噌汁キッチンカーを出しているのもその一環ですし、
例えば、CHEERPHONEのサービスを使って、ラグビーのことをもっと知っていただいたり、
目の不自由な方にも楽しんでいただけるといいなと思っています。
ラグビーは多様性のスポーツとも言われていますけど、
来場者の方の多様性にも対応したインクルーシブなスタジアムを作りたいですね。
木村:ありがとうございます。私たちも是非廣瀬さんの描く未来の実現に協力をさせてください。
前編は、テクノロジーやウェルビーイングや廣瀬さん自身の想いについて、
お話を伺わせていただきました。
引き続き、後編では「スポーツ観戦の未来」についてお話を伺います。
【会社概要】
株式会社HiRAKU
2019年創業。元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬 俊朗が代表を務め、
“ひと”や“もの”の可能性をひらくための様々なプロジェクトを企画・実装。